FHSの「/boot」ディレクトリの概要

はじめに

Linuxシステムには、複数のディレクトリがそれぞれ特定の役割を持って配置されています。FHS (Filesystem Hierarchy Standard) は、このディレクトリ構造の標準を定めており、各ディレクトリの役割が明確化されています。本記事では、FHS規格において重要なディレクトリである /boot について、その概要と役割、含まれるファイルについて詳しく解説します。

/boot ディレクトリとは?

/boot ディレクトリは、Linuxシステムの起動に必要なファイルが格納されるディレクトリです。システムが起動する際に使用されるカーネルやブートローダー、その他の重要なファイルがここに保存されています。Linuxカーネルやブートローダーの設定ファイルが保存されており、システムのブートプロセスが開始される最初のステージで参照されるディレクトリです。

/boot ディレクトリの役割

  • システムの起動に必要なファイルを格納:システムが正しく起動するために必要なファイルがすべてここに配置されており、これが正しく機能しないとシステム自体が起動しません。
  • カーネルイメージの保存:Linuxカーネル自体のファイルがここに保存されています。このカーネルはシステムの基本的な動作を制御します。
  • ブートローダーの設定ファイルを保存:ブートローダーとは、システムの起動時にどのOSを起動するかを制御するプログラムです。代表的なものとして GRUBLILO があります。

/boot に含まれる主なファイル

1. カーネルイメージファイル

Linuxカーネルの実行ファイルが格納されています。カーネルイメージのファイル名は一般的に vmlinuz で始まり、その後にカーネルバージョンが続きます。たとえば、以下のようなファイルが見られます。

/boot/vmlinuz-5.4.0-42-generic

2. 初期RAMディスク (initrd)

initrd または initramfs と呼ばれるファイルは、カーネルが起動時に使用する初期のファイルシステムを提供します。このファイルシステムは、カーネルがディスク上のルートファイルシステムにアクセスできるように必要なドライバやモジュールをロードするために使用されます。

/boot/initrd.img-5.4.0-42-generic

3. ブートローダー関連ファイル

GRUB(GRand Unified Bootloader)や LILO(Linux Loader)などのブートローダーは、システムが起動するときにどのカーネルを読み込むかを決定します。/boot にはこれらのブートローダーに関連する設定ファイルが格納されています。

  • /boot/grub/grub.cfg:GRUBの設定ファイルで、システムのブートに関する重要な情報が書かれています。このファイルを変更することで、デフォルトの起動カーネルを変更したり、追加のOSをブートメニューに加えたりできます。

4. システムマップファイル

System.map ファイルは、カーネルとメモリアドレスの対応関係を示すマップファイルです。主にデバッグやシステムのトラブルシューティングの際に役立ちます。

/boot/System.map-5.4.0-42-generic

ブートローダーの重要性

/boot ディレクトリ内にあるブートローダーは、システムが正しく起動するために不可欠です。ブートローダーは、システムの最初のプログラムとして起動し、システムのカーネルをメモリにロードします。GRUB(GRand Unified Bootloader)は、多くのLinuxディストリビューションで使用されている標準的なブートローダーです。GRUBは、複数のOSを起動する機能を持ち、非常に柔軟性があります。

/boot と他のディレクトリの違い

  • /boot と / の違い/boot はシステムの起動に必要なファイルを格納する専用ディレクトリであり、/ はLinux全体のルートディレクトリです。/boot は特に起動プロセスに特化している点が大きな違いです。
  • /boot と /usr の違い/usr はユーザーが使用するアプリケーションやファイルが格納されているのに対して、/boot はシステムの起動に関わるファイルのみを扱います。

まとめ

/boot ディレクトリは、Linuxシステムにおけるブートプロセスの基盤となるディレクトリであり、カーネルやブートローダーなどの重要なファイルが格納されています。このディレクトリが正しく構成されていないと、システムが起動できなくなってしまいます。FHS規格に従って /boot の役割を理解することは、Linuxシステムの管理やトラブルシューティングにおいて重要なステップです。