イーサネットフレームとオーバーヘッド

イーサネットフレームとオーバーヘッド|実効スループットへの影響

ネットワークの通信速度を考える際、「1Gbps」「10Gbps」といったリンク速度だけを見てしまいがちですが、 実際にアプリケーションが利用できる通信速度(実効スループット)はそれよりも低くなります。

その主な理由のひとつが「オーバーヘッド」です。 データ通信では、ユーザーデータそのものだけでなく、制御情報を含んださまざまなヘッダやフッタが付加されます。 これにより、帯域の一部が制御用データに消費され、実効スループットが低下します。

本記事では、イーサネットフレームの構造とオーバーヘッドの仕組みを詳しく解説し、 実効スループットにどのような影響を与えるのかをエンジニア向けに説明します。

イーサネットフレームとは

イーサネットフレームは、データリンク層(L2)で使用されるデータ単位です。 IPパケットなどの上位層データをカプセル化してネットワーク上に送信します。

イーサネットフレームは、単なるデータの塊ではなく、 宛先や送信元、エラー検出情報などを含む構造化されたフォーマットを持っています。

イーサネットフレームの構造

一般的なEthernet IIフレームは、以下のような構造を持ちます。


| プリアンブル | SFD | 宛先MAC | 送信元MAC | EtherType | データ | FCS |
フィールドサイズ説明
プリアンブル7バイト同期用ビット列
SFD1バイトフレーム開始識別
宛先MAC6バイト送信先アドレス
送信元MAC6バイト送信元アドレス
EtherType2バイト上位プロトコル識別
データ46〜1500バイトIPパケットなど
FCS4バイトエラー検出

さらに、フレーム間には「インターフレームギャップ(IFG)」と呼ばれる空白時間が存在します。

オーバーヘッドとは

オーバーヘッドとは、ユーザーデータ以外の制御情報や通信維持のために必要なデータのことです。

イーサネット通信では、以下のような要素がオーバーヘッドとなります。

  • プリアンブル + SFD(8バイト)
  • MACアドレス(12バイト)
  • EtherType(2バイト)
  • FCS(4バイト)
  • IFG(12バイト相当)

つまり、ユーザーデータ以外にも多くのビットが送信されているため、 実際に利用できる帯域は減少します。

オーバーヘッドの具体例

最大サイズ(1500バイト)のデータを送信する場合を考えます。


データ:1500バイト
ヘッダ・フッタ:約38バイト(IFG含む)

→ 総送信量:約1538バイト以上

この場合、実効データ率は以下のようになります。


1500 / 1538 ≒ 約97.5%

一見すると効率は高いように見えますが、 実際にはさらにIPやTCPのヘッダも追加されるため、 アプリケーションが使える帯域はさらに低下します。

小さいパケットの影響

小さいパケットを送る場合、オーバーヘッドの影響はさらに大きくなります。


データ:64バイト
オーバーヘッド:約38バイト

→ 効率:約63%

小さいパケットでは、半分近くがオーバーヘッドになることもあり、 実効スループットが大きく低下します。

このため、VoIP、DNS、API通信など小パケット通信では、 帯域よりもPPS性能が重要になります。

IP・TCPオーバーヘッド

イーサネットフレーム内には、さらに上位層のヘッダが含まれます。

  • IPヘッダ(通常20バイト)
  • TCPヘッダ(通常20バイト)

これにより、1500バイトのMTUでも、 実際のアプリケーションデータは約1460バイト程度になります。


1500(MTU)
- 20(IPヘッダ)
- 20(TCPヘッダ)
= 1460バイト(実データ)

このように、複数の層でオーバーヘッドが積み重なることで、 実効スループットが低下します。

MTUとスループットの関係

MTU(Maximum Transmission Unit)は、1つのパケットで送信できる最大データサイズです。

MTUが大きいほど、オーバーヘッドの割合が減り、効率が向上します。

ジャンボフレーム

MTUを9000バイト程度に拡張したジャンボフレームを使用すると、 オーバーヘッドの割合を減らすことができます。


通常MTU:1500バイト
ジャンボフレーム:9000バイト

→ パケット数削減
→ CPU負荷軽減
→ スループット向上

ただし、ネットワーク全体で対応している必要があり、 一部の機器が対応していないと問題が発生します。

PPS(パケット処理性能)の重要性

小さなパケットが多い場合、帯域ではなくPPS性能がボトルネックになります。


64バイトパケット × 大量通信
→ PPS不足 → パケットドロップ

スイッチやルータ、NICは、 どれだけのパケットを処理できるかという性能も重要です。

実効スループットへの影響まとめ

要因影響
イーサネットヘッダ帯域消費
IP/TCPヘッダ実データ減少
IFG転送効率低下
小パケット効率低下・PPS増加
再送帯域消費増加

よくある誤解

1Gbpsなら1Gbps出るわけではない

オーバーヘッドがあるため、 実効スループットは理論値より低くなります。

パケットサイズは関係ない

小さいパケットほど効率は悪くなります。

回線速度だけ見ればよい

実際にはオーバーヘッドやPPS性能も重要です。

実務での最適化ポイント

  • MTUの最適化
  • ジャンボフレームの利用
  • 不要なプロトコルの削減
  • パケットサイズの調整
  • 高PPS対応機器の選定

特にデータセンターやストレージネットワークでは、 ジャンボフレームが有効です。

まとめ

イーサネットフレームには、ユーザーデータ以外にも多くの制御情報が含まれています。 これがオーバーヘッドとなり、実効スループットを低下させます。

特に小さいパケットではオーバーヘッドの割合が大きくなり、 帯域効率が低下します。

また、IPやTCPのヘッダも加わるため、 実際に利用できるデータ量はさらに減少します。

ネットワーク性能を正しく理解するためには、 単なるリンク速度ではなく、オーバーヘッドやパケットサイズ、 PPS性能まで考慮することが重要です。

これらを理解することで、より正確な性能評価と最適なネットワーク設計が可能になります。