バックアップコマンド・ツール

目次
バックアップツール一覧
システム障害、操作ミス、ランサムウェア、ディスク破損、アップデートの失敗など、データ損失のリスクは日常的に存在します。そうしたトラブルから大切なファイルや設定を守るために、バックアップは欠かせない基本対策のひとつです。Linuxには多彩なバックアップツールがあり、用途や規模、技術レベルに応じて柔軟に選択できます。ここでは、主要なバックアップツールを簡潔に紹介します。
コマンドライン系ツール
- rsync:差分だけを転送する効率的なバックアップツール。ローカル・リモート双方に対応し、
--delete
などのオプションでミラーリングも可能。 - tar:複数ファイルをひとつにまとめて圧縮可能な古典的アーカイブコマンド。cronと組み合わせた簡易バックアップにも使われる。
- cp:最も基本的なコピーコマンド。スクリプトで簡易バックアップ処理を行う際に使われる。
- dd:ディスク全体をバイナリレベルでコピーするため、システム丸ごとのクローン作成に最適。
- cpio:古くから使われてきたアーカイブツールで、tarとは異なる構造でファイルを収集・展開できる。
- dump / restore:ext2/ext3/ext4ファイルシステム専用の低レベルバックアップツール。高速かつ正確なファイルシステムバックアップが可能。
ネットワーク・大規模向けバックアップ
- Bacula:複数のクライアントを一元管理できるエンタープライズ向けバックアップソリューション。スケジューリング・リストアも柔軟。
- Amanda:UNIX/Linuxのネットワークバックアップの老舗。大規模・分散環境でも効率的な管理が可能。
差分・暗号化・クラウド対応型
- Duplicity:GPGによる暗号化、gzip圧縮、差分バックアップを組み合わせた強力なバックアップソリューション。SCPやS3など複数のバックエンドに対応。
- BorgBackup(borg):重複排除・暗号化・圧縮を備えた高速バックアップツール。リモートへのSSH転送も可能。
- Restic:Go言語製の軽量で高速なバックアップツール。クラウド(Amazon S3、Backblaze B2など)にも対応し、暗号化も標準搭載。
デスクトップ・GUI向けバックアップ
- Timeshift:Linuxデスクトップ用のスナップショット作成ツール。システムファイルに限定したバックアップで、OSの状態を簡単に巻き戻せる。
- Deja Dup:Ubuntuに標準搭載されるGUIバックアップツール。Google Driveなどのクラウドバックアップも対応し、操作も非常に簡単。
クラウド・P2P連携ツール
- rclone:Google Drive、Dropbox、Amazon S3、OneDriveなど多数のクラウドサービスと同期可能な万能バックアップ転送ツール。
- Syncthing:P2Pネットワークで複数端末間のフォルダを自動同期。サーバレスでも自己ホスト型の安全なバックアップ環境が構築できる。
まとめ
Linuxには、用途や環境に応じた多種多様なバックアップ手段が揃っています。
個人利用での手軽なバックアップから、企業向けの本格的なネットワークバックアップまで、適切なツールを選定し、定期的なバックアップを自動化することで、万一のトラブルにも迅速に対応できます。
バックアップは一度作ったら終わりではなく、復元のテストや運用体制の継続性も重要です。日常的な運用の中にバックアップを取り入れ、確実なデータ保護体制を構築しましょう。